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第6回「耐寒の塗料について」

第6回「耐寒の塗料について」

耐寒の塗料について


どうして真冬の塗装作業は難しいのか、と考えてみたことが有りますか。

塗装環境や施工条件などを踏まえ、氷点下でも施工可能な方法をご紹介いたします。

塗装環境について

塗り付けた塗料の良好な乾燥硬化がスムースに進行すれば問題ないのですが、南北に長く背骨の様な山脈が連なり、反対側は海で平野部が少なく、そして山に囲まれた盆地もある日本の地形では、それこそ場所によって施工環境は様々です。

立冬を過ぎ気温が日に日に下がり、朝8時に仕事を始めようとしても10℃に届かない日が増えだし、山間部などでは5℃を下回る現場も増えてくると、外壁の結露も合わせ塗装環境が揃わない日が増えてきます

段取りを済ませながら少し陽が高くなり気温の上がるのを待ち、外壁の結露が乾燥してから塗り始め、午後4時を過ぎると薄暗くなり、施工できる時間が段々短くなってきます

更に、日中の気温が0℃以下になってしまうと、もう仕事になりません。

寒い地域での施工条件

一般に四季に関係なく、塗料を塗ることのできる施工条件は以下を満たすことが必要です。
気温は5℃~40℃くらいで、湿度は85%以下が目安です。

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  1. 気温が5℃以下になると硬化が遅くなり塗装間隔が長くなるので、造膜温度(メーカーや材料によって異なる)以下の場合には、塗膜不具合となりやすく機能低下の要因になることも有ります。予め、被塗面や塗料(缶)の加温が必要になります。

  2. 気温が30℃以上になると、塗り付けたそばから塗膜表面の乾燥が速く、泡が生じやすくなります。近年は猛暑も有り作業性も下がります。また、日よけ養生を行うことや、斜壁など直接陽射しの当たる部分では施工時間を考慮する必要が有ります。特に金属面は注意が必要です。

  3. 湿度85%以上の屋外では塗装はできません。雨が直接当たらない場所でも気温と被塗面温度により塗装面がブラッシングし、表面に結露しやすくなります。金属面も含め白ぼけすることも多くあります。屋内では加温・除湿を行えば塗装可能です。

  4. 潮風が当たる海浜地域の現場では、表面に塩分が付着し吸湿することで、そのままでは塗膜の付着不具合を発生させてしまうことも有ります。十分に洗浄し下地を乾燥させてから施工することが必要です。

  5. 強風時には塗料が飛び散ることが有ると同時に、塗装面に塵埃が付着しやすく美観を損ねることがあります。風速5メートル以上になったら塗装作業に注意し、養生メッシュなどの覆いを十分に行う必要があります。

氷点下で塗装の出来るタイカンコート

タイカンコートは平成17年に岩手県工業技術センターと共同開発し、特許を取得いたしました。

東北・北陸地方など寒冷地や、静岡や長野、山梨などの中部地方でも所によって新築・改修工事の中で、年末や年度末の工期に合わせた現場塗装作業が必要になる場合などは意外に多いものですが、先にご案内いたしましたように、塗装作業には気温など様々な現場条件を満たした中での作業が必要です。

5℃以下の施工環境でも大丈夫
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真冬でも作業を休む必要がありません
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ところが、建築仕上げ塗材の分野において、塗材の無溶剤化、水系化が進められていますが、水系の下塗材及び上塗材は、溶剤系に比べ耐水性、乾燥性、下地との密着性、耐久性など、性能の劣る場合が多く見られ、特に低温で施工した場合、材料凍結による貯蔵安定性低下や施工不良、水の蒸発遅延による硬化不良、さらに塗膜にひび割れ、付着力低下、耐久性能低下などの不具合を生じる危険性があります。

これから本格的な冬が到来するなかで塗装作業は最終工程になりますが、寒冷地だからと言って予定工期を延長することはできません。

そこで、日中5℃以下の現場環境でも、降雨、降雪でなければ現場環境に影響されることなく塗装作業を可能にし、溶剤型に比べ安全で衛生面に優れた水性仕上げ塗材として「タイカンコート」の販売を開始いたしました。  

タイカンコートは水性一液自己架橋型アクリル樹脂をベースとして-10℃という過酷な氷点下状況での塗装作業を可能にしました

改修作業であれば2回塗りで仕上がるため、省工程で素早く仕上がります。 設計価格もローラー塗り施工で2700円/㎡です。

青森現場(2015年)【施工中~終了面まで】

一面ずつ仕上げます
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サイドの完成面
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正面塗装面
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既存白面と仕上り面の様子
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仕上り部
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山形現場(2016年)

仮説足場の設置

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既存棟裏面

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既存塗膜の剥がれが目立つ
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棟裏の完成面

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正面完成写真
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