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第4回「床面の防滑処理」

第4回「床面の防滑処理」

滑る床


月の変わり目が天候の変わり目かの様に8月1日から猛暑になり毎日厳しい暑さが続きましたが、カレンダーを1枚めくると「大型台風9号・10号が沖縄へ」というニュースと共に関東でも前線が伸び、雨での9月上旬になりました。

防滑塗料「ホゴコンエースMS-F」は3月、6月、10月、12月頃に問い合わせが増えます。

理由は、春雨や梅雨、秋雨などで床が滑り易く、転倒事故となってしまうことが有るからです。また、雪の時期にも問い合わせは有りますが、雪は積もってしまうので防滑効果が生まれません。

転倒事故件数について

古くから”転んで痛いのは自分持ち”であったものですが、第9回 「統計で読み解くニッポン」の中で、ノンフィクションライター和泉虎太郎氏は、2016年の総死者130万7748人のうち、トップがガンで37万986人、次に心疾患・肺炎・脳血管疾患など死に至る要因が体の内部にある死因が続き、6位に「不慮の事故による死者」が3万8306人で全体の3%を占めると書いています。

不慮の事故の要因は、大きく分けると1:窒息9485人、2:転倒や転落が8030人、3:溺死7705人、4:交通事故5278人の4つに分けられます。

さらに細かく個別の要因を見ていくと、「スリップ、つまづき及びよろめきによる同一平面上での転倒」が5788人で最多。要するに「つまずいて転んで打ち所が悪く…」という死因が不幸な事故のトップで、その数は交通事故よりも多い、と綴っています。

床の表面について

戸建の玄関先やマンションのエントランス、ビルやショッピングセンターの入口などには石材やタイル、ガラス質のつるつるした床が多く使われています。

つるつるした床は、表面が平滑で艶が有ります。石材の本磨き仕上げやタイル面など、汚れが付き辛いのは表面にワックスを掛けたように反射しているからで、外から靴裏の汚れが持ち込まれても平滑で比較的つるつるなため汚れを残していくことが少ないですが、その分滑り易くなります。

表面に艶が無い御影石などのバーナー仕上げや、小叩き仕上げ、凸凹な溝を付けたタイルなどは、ざらざらして表面に起伏が有ることから滑りづらいのですが、靴裏の汚れが詰まり易く、歩行量が多い場所では歩行動線に沿って汚れが目立つようになりメンテナンスの頻度を上げる必要があります。

塗装して滑りづらくする方法

「ホゴコンエースMS-F」は千葉県の某テーマパークで転倒防止を目的に2002年からご利用頂いております。ゲストの通行する歩道を中心に塗り進み、メンテナンスと塗り重ねを繰り返し18年もの間、閉園後に作業を続けられています。

テーマパークで3年半経過した2005年、防滑性に問題がなく、骨材の飛び・摩耗が少ないことから、これであればマンション・ビル等のエントランス部分への利用に際し3年から5年程度は機能性を維持できることと確信し発売に至り、早15年になります。

滑り抵抗を数値で表すと

(社)日本建築学会材料施工委員会内外装工事運営委員会 床工事 WG 『床の性能評価方法の概要と性能の推奨値(案)』(2008 年 6 月))では、(表1)及び(表2)のように「滑り抵抗係数」が有り、C.S.Rという値で示されます。

それは、歩き出すときの蹴りこみを指数にしたもので0.0~1.0の数値で表され、小さいほど滑り易く、大きいほど滑りづらいのです。

建築分野では0.4以下は滑り易く危険とされています。「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法)により、「床はすべりにくいものとする」と定められました。その際にすべりにくさの基準として採用されたのが、滑り抵抗係数です。滑り抵抗係数は、試験機OY・PSM(小野式携帯型滑り試験機)で測定できます。

(表1)履物着用の場合の滑り 日本建築学会※の推奨値(案)

床の種類 単位空間等 推奨値(案)
履物を履いて動作する床、路面 敷地内の通路、建築物の出入口、 屋内の通路、階段の踏面・踊場、 便所・洗面所の床 C.S.R=0.4 以上
傾斜路(傾斜角:θ)
C.S.R-sinθ=0.4 以上
客室の床
C.S.R=0.3 以上

(表2) 素足の場合の滑り 日本建築学会※の推奨値(案)

床の種類 単位空間等 推奨値(案)
素足で動作し 大量の水や 石鹸水などが かかる床 浴室(大浴場)、プールサイド シャワー室・更衣室の床 C.S.R・B=0.7 以上
客室の浴室・シャワー室の床
C.S.R・B =0.6 以上

※(社)日本建築学会材料施工委員会内外装工事運営委員会 床工事 WG 『床の性能評価方法の概要と性能の推奨値(案)』(2008 年 6 月)

ホゴコンエースMS-Fの防滑評価

当社で利用している持ち運びの可能なポータブル摩擦系「トライボギア ミューズ TYPE:94ⅰⅡ」で(表3)のように各素地の静摩擦係数を同一箇所につき5回計測し平均してみると、Pタイル(DRY)表面0.219~(WET)表面0.254でした。

PタイルにホゴコンエースMS-Fを塗った面では(DRY)0.380~(WET)0.444と摩擦係数が増え、滑りづらくなっているのが分かります。

同じPタイル面を滑り試験機で計ったのが数値表下右側の(DRY)0.80~(WET)0.90ですので、トライボギア ミューズの数値は、おおよそ滑り試験機の半分くらいの値で表されていることが分かりました。

ホゴコンエースMS-Fは、敷地内の通路、建築物の出入口、 屋内の通路、階段の踏面・踊場、 便所・洗面所の床や、浴室(大浴場)、プールサイド シャワー室等で日本建築学会の推奨値案0.6、0.7をクリアした製品としてご利用頂けると考えております。

携帯型すべり試験機 OH-101
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トライボギア ミューズ TYPE:94ⅰⅡ
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トライボギア ミューズ TYPE:94ⅰⅡを使用している様子
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(表3)各素地の摩擦係

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施工例①

施工前の現場写真
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施工後4年経過
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施工例②

施工前の現場写真
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施工後2年経過
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施工後4年経過
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施工例③

施工前の現場写真
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施工後2年経過
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施工後10年経過
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施工実績での経過を確認すると、歩行面が広く動線に余裕がある場合には擦れによる塗膜の摩耗劣化は少ないようです。

一方、歩行動線が狭く歩行量が多い場合には塗膜の摩耗、細かなひび割れから砂利剥げが目立つ様になり、下地が細かく縞状に綺麗に見えてきますが、塗膜の残っている部分でしっかりしたグリップが有るので汚れが目立って見えることになってしまいます。

そこで、不特定多数の往来があるショッピングセンター・ビジネス街なども含め、ご使用に際しましては、その歩行頻度によりメンテナンスサイクルを決め、定期的にタッチアップによる補修をして頂くことで安全な歩行がより長く確保出来ると考えています。

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